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COLUMN

2019.10.01

vol.326「アノニマスデザイン」

伊藤 貴生(CS課)

職業柄、毎週欠かさずに見ている
TV番組があります。
Eテレで毎週火曜の午後10時50分から放送している
「デザイン トークス+(プラス)」です。

ちょうど先週のテーマがとても興味深かった
ので今回取り上げてみたいと思います。
テーマは「アノニマスデザイン」。

「アノニマス」という言葉は、英語で
Anonymus=無名の・匿名のという意味。
つまりアノニマスデザインとは「無名性の
デザイン」のことで、実際そのデザインが
昔からあるもので、誰がデザインしたか
すでに分からないデザインのことを言います。

長い年月を経て、実用性の観点から、
無駄な部分が自然淘汰されてきた
究極のデザインとも言えます。

今回のゲストはプロダクトデザイナーの
深澤直人氏でした。無印良品のデザイナー
で有名ですね。グッドデザイン賞の審査
委員長もされています。壁にかけるCD再生機
やドーナツ型の加湿器、auの携帯電話「INOFORBAR」を
デザインしたことでも知られています。

深澤氏がアノニマスデザインに取り組むように
なったキッカケとして、高浜虚子著『俳句への道』
の中のくだり、「俳句はありのままの現象を詠うもの」
という一言に出会って、デザイン観が大きく変わった
からだと言っていました。

デザインとは、そのデザイナーの自我が出る
のが当たり前だと考えていたのが、自我を出さず
日々の生活からにじみ出てくるデザインこそ、
究極なのではないかと思うようになったと。

日本にはアノニマスデザインを表す言葉として、
「民芸」という言葉があります。「民藝運動の父」
と呼ばれる柳宗悦が定義した言葉で、彼が作った
日本民藝美術館の現館長も深澤氏は務められています。

いわゆる「民芸」という言葉に、そこまでの
意味があったのかと知り驚きました。

一人の才能あるアーティストがその時々に
生み出すデザインも素晴らしいですが、長い
年月をかけ、たくさんの人の手を経てできた
デザインも素晴らしいのだと改めて思いました。

そしてそのたくさんの人の手と時間をかけずに、
その領域へアプローチを試みる深澤氏は、
やはり「極めてきた人」だという印象を持ちました。

今後も興味深いテーマが控えている番組なので、
ここでオススメさせていただきます。

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